自作キーボード作りました(Wraith)

wraith

 このキーボードは2023年の後半あたりに作成したキーボードです。せっかく作ったんですがけっきょくのところ使わなくなり、このまま忘れ去るのも悲しいので、ブログにだけ残しておこうと思います。

作った経緯

 元々私はkeyball39というキーボードを使っていました。keyball39についてもこちらの記事でレビューなどしています。

keyball39

 keyball39は自作キーボード業界に革命を起こしたとされているかなり有名なキーボードです。トラックボールを内蔵しているというのが最大の特徴で、私も最初使ったときはかなり可能性を感じました(ススメ→トゥモロウ)。ところがしばらく使っていると不満はやはり出てくるようで、私が不満だったのは主に以下の2点です。

  • トラックボールが窮屈
    keyballだと、トラックボールの配置の関係上、トラックボールが手のひらの中にある感じになるんですよね。それが少し使いにくいです。
  • 親指キーの向きが微妙
    keyballはキーがすべて平面的に配置されていて、親指キーは指の側面で押す感じになるので、ずっと使っていると親指が痛くなっていました。

 そんなわけで、keyball39の不満点を解決したキーボードを作ってやろう! と思い立ったわけです。
 ちなみに自作キーボードを使うこと自体keyball39が初だったので、自分でイチからキーボードを作成するということはしたことがなかったです。ただ自作キーボード設計ガイド Vol1 設計入門編という本を読めばすぐに作ることはできました。この本は非常におすすめできます。

キーボード作成日記

 まずキーボードの名前をWraithと名付けました。これには深淵な意味があるのですが、それを語るには余白が狭すぎるため、ここでは割愛します。
 ついでにロゴも作りました。このブログのファビコンにもなっている、ブログのマスコット的存在、Wraithちゃんです。とってもキュートですね。

立体ケースの作成

 今回の目標はkeyball39のような左右分割キーボード+トラックボール内蔵をベースにしつつ、keyball39の弱点を解消したキーボードを作成する、ということになります。
 これを実現するために、キーボードを立体的に作ることにしました。キーボードを立体的にすることで、トラックボールや親指キーをいい感じに配置して、keyball39の弱点を解消することを考えました。

 回路図よりも先にキーボードのケースを作成しました。私は3Dプリンタを持っていたので、3Dプリンタで印刷してケースを作成することにしました。今回の目標においては、基板の設計よりも3Dケースの設計のほうが本質的だったりします。

 そんなわけでこんなふうになりました。トラックボールをできるだけ自然な位置に配置し、また握る感じで手を配置できるようにすることで、親指の向きも自然にしています。また最初からかなりテンティングさせた構造になっています。
 このような立体的な配置のキーボードは探すと色々と見つかるので、それらを参考にしつつ、トラックボールを追加したり、微調整したりなどして作成しました。
 この3Dモデル作成に一番時間がかかりました。

基板設計

 キーボードの回路図の作成方法などは、自作キーボード設計ガイド Vol1 設計入門編を読めばだいたいできます。トラックボール周りは本に書いてないので調査が必要ですが、探せば色々と出てきます。

 マイコンにはraspberry pi picoを採用しました。自作キーボードではpro microが使われることが多いですが、練習でraspberry pi picoを使ってみたかったので、使ってみました。

 回路図を作るのは比較的簡単ですが、基板を設計するのはそこそこめんどくさかったです。理由はケースが立体的なので、基板も立体的な形を取れるように作る必要があるためです。キー部分の基板にはflexible PCBという曲げられるタイプの基板を使いました。これはJLCPCBで発注できます。

 発注した基板はこんな感じです。発注はJLCPCBです。
 全部で5枚あり、メイン基板(マイコンが乗る基板)が左右で2枚、キーマトリクス基板が左右で2枚、またトラックボール用の基板が1枚になります。

 トラックボール用の基板にPMW3360というトラックボール読み取りセンサーを実装することで、トラックボールを使うことができます。

 画像ではわかりにくいですが、キーマトリクスの基板はflexible PCBになっており、薄くてある程度曲げることができます。flexible PCBは端子を出すことでそのままFFCとして使うことができるので、基板への接続は簡単です。

プログラム設計

 QMK Firmwareを使えばキーボードのプログラムはそこまで難しくはないです。raspberry pi picoやトラックボールにも対応しているので、ネットで調べながらわちゃわちゃすればなんだかんだでできました。

完成品

 完成度としては、なかなかよいと思います。少なくとも、最初に述べたふたつの改良したい弱点「親指キーの位置」と「トラックボールの位置」は改善しています。ただ、ケース部分は全体的にプロトタイプではありますね。とりあえず使える形にしてそのあとにさらに改良するというルートを考えていましたが、改良するフェイズに至ることなく使わなくなってしまいました。
 ただ、自分ではkeyball39は超えたキーボードを作れたとは思っています。

なぜ使わなくなったのか

 keyball39を超えたと自画自賛しているキーボードなのになぜ使わなくなったのか、理由はひとつで、使っているうちにトラックボール内蔵が微妙な気がしてきたからです。
 keyball39をしばらく使って慣れたとくらいのときはトラックボール内蔵最強と思っていましたが、実際のところ別に内蔵じゃなくていいなーというのが私の結論です。
 トラックボール内蔵型キーボードの最大のメリットはトラックボールとキーボードの間の移動がなくなることで、最大のデメリットはトラックボール単体で見たとき通常のトラックボールよりも色々な面で劣ることだと思っています。私にとっては前者のメリットよりも後者のデメリットのほうが大きいなーと感じてしまったので、トラックボール内蔵キーボードはやめて、MX Ergoに舞い戻りました。
 そんなわけで、Wraithはしばらく使っていましたが、けっきょくは使わなくなってしまいました。

 とはいえ(習作を除いて)初めて作ったキーボードですし、作成にはなかなか時間がかかり苦労もありましたが、勉強になったので作ってよかったと思います。

コメント

  1. 菊野 より:

    おー…3Dプリンターで作ったんですか…
    凄いですね…

    • フローラ フローラ より:

      コメントありがとうございます。
      3Dプリンタ、いろんなものが作れて非常に便利です。

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