こんにちは、フローラです。フームともいいます(twitter: @tiffinstarlight)。
2022年11月に受験した統計検定1級(統計数理、統計応用(理工学))に合格しました! ちなみに統計応用(理工学)はまさかの優秀成績賞でした。
この記事では私が統計検定1級を受験するにあたって勉強したことや感じたことなどを、できるだけ今後1級の受験を考えている人の参考、試験対策になるように書きたいと思います。ちなみに、今日まさに合格発表を確認したばかりなので、テンション高めです。
言うまでもないですが、この記事は私の主観で書かれているので、受験を予定している人は他の人のブログなども色々参考にするのがいいと思います。
試験勉強前の私の実力
- 某国立理系院卒
受験の2年前まで理論物理系の研究をしていたのもあり、高校、学部教養レベルの数学(統計学は除く)に不安はありませんでした。 - 統計学の知識はほぼなし
統計学を使う研究はしていなかったので、事前の統計学の知識はほとんどありませんでした。分散、正規分布(物理の人はガウス分布って呼ぶ人多いよね)くらいなら知ってる。カイ2乗分布? なにそれ知らないけど名前かっこいいじゃん! って感じでした。 - 統計検定受験自体始めて
統計検定は1級やそれ以外の級を含めて今回が初めての受験でした。最初は1級ではなく準1級や2級などの優しい難易度から受ける人のほうが多いと思いますが、私は最終的には1級が欲しかったので、最初から1級を受けることにしました。こういう「級」みたいなランク分けがあると一番上が欲しくなっちゃうんですよね。だってかっこいいじゃん。
今後受験を考えている人は私の元の実力と自分の実力を照らし合わせながら以下の記事を読めばどれくらい勉強すればいいか想像がつくかもしれません。
私の体感だと、1級はもともとの統計学の知識がゼロでも十分受かります。ただ大学教養レベルの解析学や線型代数の知識がないと若干苦労すると思います。
また、最終的に1級が欲しい場合には準1級など刻まずに最初から1級を受けるというのは悪い選択ではないと思います(強く勧めるわけではないですが)。
読んだ本
私が実際に読んだ本を紹介していきます。
現代数理統計学の基礎(久保川 達也)
現代数理統計学の基礎(久保川 達也)
新装改訂版 現代数理統計学(竹村 彰通)
新装改訂版 現代数理統計学(竹村 彰通)
まず久保川、竹村を紹介します。この2冊は有名ですね。これらについては他の1級記事でもたいてい言及されている印象です。
実際有名なだけはあってどちらも良書で、統計検定1級の統計数理に合格するには少なくとも久保川と竹村のどちらか片方は読んだほうがいいと思います。どちらの本も統計検定1級が意識されている旨の記述があり、信頼できます。
私はどちらも通読しましたが、時間の都合で片方しか読まない人も多いと思います。どっちがいいかは難しいですが、久保川のほうが導入が丁寧で初学者には優しいと感じました。私は統計学完全初学者でしたが、久保川はすんなりと読むことができました。もし最初に竹村を読んでいたら苦戦していた気がしないでもないです。また試験範囲のカバー率も久保川のほうが高いですね。「score検定、Wald検定」「デルタ法」「情報量基準」などは統計数理の範囲ですが、久保川にしかありません。また「確率過程」「ハザード函数」などは統計応用(理工学)の範囲ですが、これも久保川にしかありません。
逆に竹村は扱っているトピックは久保川よりも少ないですが、そのかわり重要なトピック(特に線形モデル、正規分布に関する記述、ベイズ、ノンパラメトリック法など)が厚く書かれており、個人的には久保川よりもわかりやすかったです。本としては私は竹村のほうが好みですね。
ただし、演習問題に関しては明らかに久保川のほうが優れていると思います。このふたつの本はどちらも演習問題が豊富なのですが、久保川のほうがより豊富でかつ統計数理対策に直接役に立ちそうな問題も多いと感じました。
けっきょくどっちがいいのかって話ですが、両方読むのがベストなのは当然として、片方に絞るなら私は久保川をおすすめします。差はやはり演習問題ですかね。ただし竹村も非常に良書なので(私はあくまで竹村のほうが好きです)、片方しか通読しないにしても両方購入して随時交互に参照するのがいいかなと思います。
この2冊を読み演習問題をこなせば、あとは過去問をやるだけで統計数理は合格圏内だと思います。
逆に言えばこの2冊はあくまで統計数理のテキストであって、統計応用を合格するには更に勉強する必要があります(私は最初この2冊だけで応用も対策できると思ってました……)。
増訂版 日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学
増訂版 日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学
これは統計検定1級の公式テキストですね。公式のテキストというだけあって、統計検定1級の範囲を数理、応用含めて網羅的に記述してあります。ただし扱っている範囲が広いために、ひとつひとつの記述はかなり簡素でありわかりにくいことは否めません。この本でイチから勉強を開始することはおすすめしません。
とはいえ、1級を受けるなら買って損はない本だと思います。統計応用の範囲を全体的にさらっているような本は他に見つけることができなかったので、私は統計応用対策はこの本と過去問がメインになりました。あとなんだかんだで公式テキストが手元にあると安心できます。
多変量解析入門――線形から非線形へ(小西 貞則)
多変量解析入門――線形から非線形へ(小西 貞則)
多変量解析を勉強するために読みました。これは非常に良書でした。
ただ私が受験した「理工学」では多変量解析はほとんど出ていなかったので、念のために読んだという感じですね。実際本番でも多変量解析の問題は出ませんでした。
とはいえかなりの良書だったので、多変量解析が重要な分野を受験する人にはおすすめです。
過去問
過去問
過去問は高いです。準1級は6年分が一冊になっているものがあるのですが、1級は2年で1冊なんですよね。私が受験した時点では8年分(4冊)過去問があり、全部買うと1万円くらいになりました。
とはいえ受かるためには必須なので、足元を見られている気分になりながらも必ず全部買いましょう。また一番最近の過去問は公式サイトに上がっているので、それをダウンロードして解きましょう。
私は過去問は数理と応用(理工学)に関しては6周以上はやったと思います。ほとんど答えを暗記するレベルまでやりました。まず過去問を解いてみて「わからない、穴がある」と感じたトピックに関してテキストを読んで勉強する、そしてまた過去問に戻るというのをループするのがいいと思います。また過去問の解説は必ずしも親切ではないので、もし過去問の解説を読んでみてもわからない問題があればぐぐってみましょう。有志による解説が見つかる場合が多いです。
数理と自分の選択した応用分野の過去問を一通りやったら、自分が選択していない応用分野の過去問もやるといいと思います。絶対自分の選択分野ででないような問題はやらなくていいですが、他分野の過去問にも出そうな問題は多数あると思いますので。
実際、私の受験した年では数理で1問、応用(共通問題)で1問、他の分野の過去問で見たような問題が出題されました。他分野の過去問はぜひやりましょう。
私の勉強の流れ
私が実際どんな感じで勉強したか書いておきます。
- 4月-8月(途中一ヶ月ほどサボる)
私は4月に突如統計検定1級の受験を決め、そこから勉強を始めました。
別の人のブログなどを参考にして久保川と竹村という教科書がおすすめと聞いたのですぐにこの2冊を購入し、久保川から読み始めました。久保川は演習問題もぜんぶやり読み終えるのに2ヶ月ほどかかりました(演習問題めちゃくちゃ多い)。次に竹村を読みましたが、これは久保川を読んでいたのもあり演習問題含めて久保川よりも素早く読むことができました。ただそれでも1ヶ月くらいはかかりましたね。院生のときの感覚で読み始めて2週間くらいで通読できると思っていたのでちょっと焦ってました。最初は久保川と竹村は2周ずつ読む予定だったのですが、思いの外時間がかかってしまったため1周ずつになりました。 - 9月
久保川と竹村を読み終えたので過去問1周目をやりました。ここでようやくこれがどんな試験なのか把握できた感じですね。
またここに来て久保川と竹村だけでは統計応用には対応できないということを知ったので、「日本統計学会公式認定 統計検定1級対応 統計学」を購入し、統計応用共通分野と理工学分野のところを通読しました。 - 10月
過去問演習を繰り返し、知識を固めました。また久保川の演習問題の2周目をやりました(試験で出そうなもののみ)。
統計数理に関しては、過去問を2周したくらいの段階で自信がついていました。逆に統計応用はまだ理解が浅いトピックが多く、かなり不安になっていました。 - 11月
統計数理は大丈夫だろうというレベルにはなったので、統計数理は控えめにして統計応用メインの勉強に切り替えました。基本的には応用分野の過去問(他分野含む)を解き、穴があればテキストなどを読んで埋めるというのを繰り返しました。途中で統計応用の多変量解析分野が不安になったので、時間的にぎりぎりでしたが「多変量解析入門――線形から非線形へ(小西 貞則)」を購入し、出題されうる部分を読みました。
また公式の統計応用出題範囲表を読み、不安がある分野を、浅くですが、ネットの解説なども使いつつさらいました。
11月に入ってからは統計数理はスルーで統計応用の対策をメインにしていました。
また試験前の1週間は有給休暇を取得し、過去問やテキスト、自分が作ったノートなどを流し読みするというのを繰り返しました。
こんな感じでした。このスケジュールがベストと思っているわけではないので、参考程度にどうぞ。
統計応用の勉強メインにシフトするのはもっとはやいほうがよかったと個人的に思っています。1級合格には統計数理をできるだけはやく押さえて、統計応用の対策に早い段階でシフトするのがポイントな気がします(少なくとも理工学の場合)。
「久保川、竹村」→「過去問をベースに統計数理及び統計応用の頻出トピックの知識を固める」→「他分野の過去問なども使い統計応用分野の対策」という大まかな流れは悪くなかったと思います。
概算ですが、トータルの勉強時間は600時間くらいだと思います。合格者の平均勉強時間よりは長いんじゃないかなーと思います。
統計応用(理工学)の話
理工学の注意点ですが、理工学の分野はここ数年で傾向が変わっている印象です。数年前は理工学の統計応用は統計数理に毛が生えたみたいな感じで穴場だったのですが、いまはそうとは言えません。2022年は2問は数理寄りの問題が出ていましたが、それでも1問は応用問題を解かないといけなかったです。また2021年に関しては数理寄りの問題は1問しか出ていません。
今後傾向がどう変わってくるかは私はわからないですが、理工学を選択して数理の勉強だけで合格を狙うというのはもはや現実的ではないと思っておいたほうがいいかもしれません。
というか統計応用(理工学)は最終的には運ゲーな気がしちゃいますね。傾向が掴めないです。
統計応用(理工学)を受ける人のほとんどが「自分は理学部、工学部出身だから理工学だな」という感じで統計応用の分野を選択すると思いますが(私もそう)、受かることを第一に考えるなら過去問に一通り目を通して簡単そうと感じた分野を選ぶというのも悪くない手だと思います。実際、私は理工学以外の過去問も(全部ではありませんが)やりましたが、人文科学、社会科学のほうが簡単と感じることが多かったです(ただ分野によって合格点に差がある可能性もあります、不明です)。
また理工学頻出の実験計画が少し異質で、独立した勉強が必要かつ、多くの社会人にとって役に立つ知識にはならないんですよね。そんなわけで、脳死理工学選択をしないという手もひとつあると思います。
ただ私がもし今年統計応用不合格で来年また受験するとなっていた場合、来年も理工学で受けていたと思います。やはりなんだかんだで、自分の専門分野のを取りたくなってしまいますので……。合格証にもしっかりと分野が書かれますから。
だらだらと書いてしまいましたが、さらに未来ではまた傾向がわかりやすくなっている可能性もあるので、最新の情報から判断をするといいと思います。
何割取れば受かる?
私は統計数理よりも統計応用のほうが問題が難しいと感じました。これは私だけでなく、周りの受験者を見ても同じことを言っている人が多い印象です。
一方で、合格率は数理と応用はそこまで大きな差はないんですよね。2022年だと数理が22.4%、応用が20.6%のようです。過去の合格率を見ても、応用のほうが気持ち低いけど大体同じくらいという年が多いです。まあ年によっては差があるときもありますが。
なので合格最低点は応用のほうが低いと予想しています。たぶん統計数理が6割くらいで統計応用が5割くらい取れば受かるんじゃないかなーと予想しています。もちろんボーダーは非公開であるし、ボーダーは動的だと思うので、信憑性は全くないです。目安くらいにどうぞ。
試験当日の感じ
まず試験会場ですが、私は東京で申し込んだのに神奈川でした(なんで?)。ちょっと遠かったので少し機嫌が悪くなりましたね。会場は学校ではなく、試験用のスペースなどを貸し出しているっぽい施設で、かなり綺麗でした。近くに喫茶店があり、統計数理の前と統計数理と統計応用の間の時間には入店してテキストを読んでいました(と見せかけて、半分以上の時間はtwitterをしていました)。
私が当日になるまで気づかなかった注意点を少し。
- 解答用紙は有限で小さい
解答用紙は有限で、そこまで余裕はなかったです。特に統計数理ではほんとにギリギリでした。極端に少ないわけではないのでそこまで細かく書く必要はないと思いますが、有限であることは意識しておいたほうがいいと思います。足りなくなったら何が起こるのか、考えただけで恐怖ですね。
また解答用紙は冊子になっており切り離すことはできません、また用紙のサイズも小さいです。更には罫線が引いてあります、邪魔です。解答用紙はかなり扱いにくい印象を受けました。
逆に、計算用の余白は十分に確保されていました。 - 時間がまじでない
数理も応用も共通で、時間がないです。たぶんこれは統計1級を受験する人の中では常識だったのかもしれないですが、私は時間については全く意識しないで勉強していたので、当日ちょっと焦りました。時間がないからどうすればいいのかというのは私がむしろ知りたいくらいですが、時間が足りないタイプの試験であるということは意識しておいたほうがいいと思います。
私は当日の判断で、記述に関しては予定よりも簡素化しました。日本語での説明を入れたほうがいい箇所を式だけにしたりなど。あまりに簡素化しすぎて点数を引かれても嫌ですが、丁寧に書きすぎると時間がなくなると思います。
また検算する時間とかはないと思ったほうがいいと思います。一発で正しい計算ができるように日頃から鍛えておきましょう。
問題選択に関しても、やれば解けそうでも計算が重い問題はできれば避けたいところですね(まあ実際は解く前に計算が重いかどうか判断する余裕はないのですが)。過去問を見ると「この問題選んだら絶対落ちるな」みたいな計算が重すぎる地雷問題が稀にありますよね。悪魔的です。
ちなみに私は時間が足りなく焦るあまり問題文を流し読みして読み間違えるというやらかしをしてしまいました、時間が足りなくても焦らず問題文はちゃんと読むようにしましょう(戒め)。
まとめ。
統計検定1級は無知の状態から始めてもしっかり勉強をすれば十分受かる可能性がある試験です。私の記事を参考に1級に合格する人が出ればすごく嬉しいです。質問があればコメントに書いてくれたら答えると思います。
最後に重要なことですが、試験1ヶ月前になったら毎日とうけいあかりちゃんに祈りを捧げましょう。
私の今後の話
これはピュアに個人的な話です。
統計検定1級持ってるって言うと知らない人からするとなんか統計学めちゃ強い人みたいに思われそうですが、少なくとも私に関しては全くそんな事はないです。
その最大の要因はやはり実際に統計学を使っていないということだろうと思います。もともと私はkaggleをはじめようと思い立ち、そのために基礎知識として統計学が必要だ、じゃあ統計学の勉強をするときにせっかくだから統計検定というのを受けてみるか、という感じで統計検定1級の受験を決めました。なので、私にとって統計検定1級の合格はあくまで通過点です。今後はkaggleに積極的に参加したり統計学を使うことができる業務に挑戦したりなどして知識や技術を磨いていきたいですね。
あとは可能性は高くないですが、もしかしたら来年統計応用(社会科学)受験するかもしれません。
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